辞書は「お金で買える実力」
翻訳の仕事をしていると、辞書を引く機会が必ずあります。
というより、辞書なしで翻訳業をやっている人は、おそらくこの世の中にいないでしょう。
それくらい、翻訳に辞書は必須のツールです。
振り返れば、初めて英語を学んだときから、辞書は手元にあり、辞書を引かないことには英語の知識を深めることは難しかったなと思います。
私が英語を学習し始めた頃は、まだ電子辞書はそれほど身近なものではなく、紙の辞書をどれだけ早く引けるかが自分の中での英語習熟の指標になっていたような気がします。
その後、紙の辞書を何冊も持ち運ぶことは非合理的であるため、外出先でも手軽に使えるツールとして電子辞書を使うようになりました。
それでも、例文や豊富な表現を一目で確認できる紙の辞書は、私にとって欠かせない存在でした。
そして今、翻訳の仕事に取り組むようになって、改めて辞書の重要性をひしひしと感じています。
同時に、そのすばらしいツールをどれだけ効率よく使いこなすかがプロとしての基礎となり、より良い仕事、より多くの収入につながっていくと考えるようになりました。
ここでは、プロの翻訳者として購入しておくべき辞書をご紹介します。
一般的には「こっちの方がオススメじゃ…」と思われる辞書が含まれていない場合もありますので、ご了承ください。
翻訳者として(最低限?)必要な辞書
※すべての辞書は、いわゆる「串刺し検索」に利用できる「LOGOVISTA」の製品を購入されることをお勧めします!
英和辞典/和英辞典
ジーニアス英和大辞典
何を差し置いても、まずはこの 1 冊を購入しましょう!
すべての分野に対応した翻訳と、豊富な表現が掲載されています。
※「ジーニアス英和・和英辞典」もありますが、これらは串刺し検索に設定できない場合があります!→私はできませんでした
リーダーズ英和辞典
研究社リーダーズプラス
リーダーズ英和辞典とリーダーズプラスは、LOGOVISTA のセット版が販売されており、これら両方を購入しておくことをお勧めします。
両方合わせて対応する語句は470,000語にも及びます。
デイリーコンサイス英和・和英辞典
英和・和英合わせて167,000語を収録しています。
豊富な意味とわかりやすい解説があるのでオススメです。
なんといっても、英和と和英がセットになっているのがいいですね!
美しい日本語表現に必要な辞書
広辞苑
言わずとしれた、日本語の宝庫です。
「美しい日本語」を使いこなすためには必携です。
三省堂 スーパー大辞林
広辞苑と並び、こちらも掲載される日本語数はとても豊富です。これら 2 冊を使いこなすことで、日本語マスターになれます。
研究社 日本語表現活用辞典
一般の国語辞典ではなかなか引くことができない「コロケーション(つながり)」に着眼した画期的な日本語辞典です。
動詞、形容動詞を核にした編纂もその特徴の1つで、25,000 を超える生きた例文は、「正しい日本語」を用いるための貴重なお手本になります。
研究社 日本語口語表現辞典
国語辞典だけではわからない、「話し言葉」を網羅した辞典。
「生きた」翻訳を目指すためには、こちらで用いられている表現を活用することが必要です。
研究社 日本語コロケーション辞典
普段あまり聞き慣れない「コロケーション(語と語の慣用的なつながり)」を網羅した辞典。
日本語について、もっと詳しく理解できます。
英語の意味を理解するための「英英辞典」
メリアム・ウェブスター英英辞典
アメリカ最大のシェアを持つ辞書です。
特に、英語のノンネイティブの人を対象にしているため、内容はとてもわかりやすいです。
専門辞書(IT 関係を中心に)
日外コンピュータ用語大辞典英和・和英/用例・文例
コンピュータ関連分野で使われている用語の英和・和英辞典。
基礎用語から最新用語まで、英和36,700語、和英38,200語が収録されています。
特に、情報技術関連の JIS 用語を網羅しているのがポイントです!
研究社 英和コンピューター用語辞典 電子増補版
見出し語数は6,825語で、用例・句例数は5,804収録されています。パソコン、インターネット用語を中心に、電子商取引、暗号法、著作権、情報化学関連の英語がよくわかります。
ビジネス技術実用英語大辞典 英和編&和英編(通称:「海野さんの辞書」)
産業翻訳者で知らない人はいないほどの名著です。
著者が英語圏のあらゆる媒体から収集した豊富な語彙が収録されており、これ 1 冊でほとんどの内容をカバーできるほど充実しています。
※LOGOVISTA 版はありません
辞書を引いて、脳内にも用語ベース (TM) を作ろう
産業翻訳のプロとして仕事をしていると、1 日に何百回も辞書を検索します。
しかも、同じ単語の意味を何回も調べることもあります。
経験を積むにつれ、用語ベース (TM) に単語や語句を登録して使いやすくしていけるのですが、経験が浅い間はとにかく辞書を検索しましょう。
何回も調べていくうちに、英語の持つ意味と日本語の翻訳内容がつながってくるようになってきます。
やがて、TM を調べなくても、自分の頭の中で「これだ!」と自信を持って記載できる日本語が現れるようになってくるのです。
私は、これを「脳内用語ベース」と呼んでいます。
もちろん、過信は禁物で、間違ったまま覚えていたり、勘違いをしていたりすることもよくありますので、とりあえず辞書を検索することをルーティン化して、自然な動作の一部にしましょう。
とはいえ、英文を見た瞬間に頭の中で仮訳がぱっと浮かぶようになったときの快感は、言葉で言い表せないものがあります。
そのためにも、たくさんの辞書を手元に(データ上で)置いて、より多くの翻訳内容を引き出しとして準備しておくようにしましょう。